APN(All Photonics Network)とは

はじめに

出典:NTT R&D FORUM 2023

2023年11月「NTT R&D FORUM 2023 ― IOWN ACCELERATION」に参加し、IOWNの肝になるAPN(All Photonics Network)について技術者と意見交換をしてきました。
本記事はAPN実現に必要な技術要素について、勉強したことを個人の理解のためにまとめた記事となります。

APN(All Photonics Network)自体が何かについては、以下動画に分かりやすくまとめてありましたので、気になった方は見てください。

APN実現に必要な要素技術とは

APN(All Photonics Network)はその名の通り、ネットワークを端から端まで全て光(フォトニクス)の技術に置き換えたネットワークのことです。

従来のネットワークの場合
ビル間のような長距離通信を除いて、電気による通信をおこなっている。

APNの場合
光と電気の変換箇所をなくし、End-Endでの光通信を実現。

出典:https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=CMpzKXih_ac

例えばNTTの現在のネットワークでは、我々の家から電柱に沿って張り巡らされた光ケーブルがNTTのビルまで接続され、ビルの中の大規模なルータやサーバーに接続されています。ルータやサーバーは電気信号に変換して処理を行い、次のNTTビルまで再度光に変換されて転送されます。

我々ユーザがYouTubeを見たり、ネットサーフィンしている時には、『光<ー>電気』の信号変換のやりとりが大量に発生するため、電力消費が大きく、変換時に生じる、通信遅延などが発生します。

またAPNでは電力、遅延問題の解決だけでなく、それらが解消されることで、今後益々ネットワークの利用が増加することから、ネットワークの輻輳問題が懸念される。

この問題を解決するための要素技術は大きく分けて2つあります。

  1. 光電融合デバイス技術
  2. 高速大容量光転送のファイバー技術

光電融合デバイス技術

光回路と電気回路を融合させる技術のこと。

現在まではNTTCOM社が担う国際間の長距離通信や、NTT東西の電柱に張り巡らせたファイーバ網で光通信技術を使ってきたが、大規模なルータを構成する通信PKGボード間や、ボード内の大規模集積回路(LSI: Large Scale Integrated Circuit)を光に置き換える構想が進められている。

一般に、電気配線は、データの速度や伝送距離の増加に伴い伝送損失が大きくなるというデメリットがあり、遅延や、電力増に繋がる要因となるため、電気配線区間を光に置き換えることでそれらの問題解決が期待できる。

出典:https://forum.rd.ntt/event/7783/module/booth/227636/162688?boothCategoryIds=18911

高速大容量光転送のファイバー技術

NTTでは高速大容量転送を実現するための様々な技術開発をしています。
具体的には以下4つの技術カテゴリで研究が進められている。

  1. 光の道を増やす技術
  2. 信号の色を変える技術
  3. 超高速信号処理
  4. 色を問わない切換え
出典:https://forum.rd.ntt/event/7783/module/booth/227636/162687?boothCategoryIds=18911

光の道を増やす技術

従来から広く使われてきた光ファイバーではファイバー1本の穴に1つモード(シングルモード:1つの波長の光)を流す仕様のため、1本の光ファイバーで送信できる容量に限界がある。
そのため、マルチモード(複数の波長の光)に対応したケーブルで容量を増やす技術や、光ファイバーに複数の穴を作り、その中に光を通す技術(マルチコアファイバー)が研究されている。

出典:Black Box
出典:EETimes Japan

NTTでは、今現在日本中に張り巡らせた従来の光ファイバーを全交換するのは現実的でないため、既存光設備との相互接続に向けた研究がされている。

出典:https://forum.rd.ntt/event/7783/module/booth/227636/162687?boothCategoryIds=18911

信号の色を変える技術

NTTが考えるAPNでは、理想では1ユーザが1波長の光を占有する時代を描いているらしく(本当?)、1ユーザ1波長とまでは行かずとも、光電気の変換をせずEnd-Endで繋ごうとすると、波長枯渇が問題となってくる。

そこで、通信を伝達する過程で光の波長を変換する必要が出てくる。

IP通信の世界でも似た話で、世の中にある通信装置(パソコンやスマホ等)にグローバルIPアドレスを割り振るとアドレス枯渇するため、例えば家の中ではローカルIPアドレス(皆に馴染みのある192.168.xx.xx)のアドレスを使いアドレス節約をするのと同じ様ことがAPNでも起こる。

APNの場合にはIPと違って物理的な光の波長をEnd-Endで繋ぐため、複数の波長多重信号を合波・分波する機構と、それを別の波長へ変換する機構がIPで言うNATに当たる部分と似てる。

出典:https://forum.rd.ntt/event/7783/module/booth/227636/162687?boothCategoryIds=18911

NTTではAPNを構築する際に波長多重数の見合いから、例えば、県や市単位といったまとまった単位内でユニークな波長λを割り当て、別の県や市を跨ぐ通信の場合は、波長を多重した後ブロック間でユニークな波長λに載せ替えて送信する方針になるのではないか。

長高速信号処理技術

大容量データを高速処理するための技術についても研究開発がされている。

世界最高の毎秒1.2テラビットの演算が可能。

出典:https://forum.rd.ntt/event/7783/module/booth/227636/162687?boothCategoryIds=18911

色を問わない切換え技術

従来の光通信では伝送損出の少ない波長帯の中でもC,Lバンドの波長を活用していたが、APNの世界ではC,Lの波長帯では不足するため、より広い波長帯の活用が求められている。

一方で、波長帯が増えることで、多重化された光を合波・分波するデバイスが波長帯ごとに必要となるため、設備の大型化等の課題が出てくる。

NTTでは世界一広帯域を扱えるスイッチの開発に成功しているとのこと。

出典:https://forum.rd.ntt/event/7783/module/booth/227636/162687?boothCategoryIds=18911

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